2008年2月12日
映画『母べえ』
黒澤明のファンにお馴染みの野上照代女史の原作を吉永小百合主演で山田洋次が映画化したという事でちょっと興味があったので鑑賞してきた。
う~んいざ始まってみると、カット割りが平凡で切り返しも工夫がなくて細かい箇所が気になり中々話に集中し辛かった。その為かどうか、'普通の戦時中の苦しかったどこにでもあるお話'という程度に留まってしまっていて母べえの個性が際立ちにくくあまり活きてないし、思想犯として捕らわれてしまった父べえの苦悩と苦労が走馬灯の様にサラサラッと流れてしまう。もっともっと当時の苦しさや世知辛さが表現出来るハズの山田洋次監督なだけにすっかり丸くなってしまったのねぇ...と残念に思わずにはいられない。
それでも印象的なカットもある。ジメジメと薄暗く不衛生極まりないタコ部屋状態の牢獄に押し込められている苦痛に満ちた表情の父べえの寄りからキャメラがスーッと引いていくと牢獄部屋の様子があらわになり、ギュウギュウ詰めの状態である事が分かると同時にキャメラは右横にパンし小窓を映し出す。その小窓からは晴れ晴れした青空と真っ白い雲がゆーっくりと流れている。天国と地獄のコントラストがよく表れている。それと浅野忠信扮する山ちゃんが乗っている軍の輸送船の船内シーンも美術とか特効含めて良く出来たシーンだと思う。
父べえ(坂東三津五郎)の妹役の檀れいは結構私も好きなタイプの女優さんで「武士の一文」に引き続いての山田組だから(「武士の一文」は未見)どんな芝居をするのかと期待していたけどあんまり上手くいってない。展開するにつれて良くなっていくのだけど、前半の彼女は良くない。彼女の憧れの木暮実千代には遠い感じ。浅野忠信はまぁまぁ上手くいっているけどそれでも、もっと上手く演じられたと思う。一番自然で上手かったのは初べえの志田未来と照べえの佐藤みくの女の子二人。
戦争を知らない世代の若者に見てもらいたいと思うのならもっとえぐらないと伝わらないのではないかな。どうしても「これ位でいいか...」という感じで撮ったような印象がぬぐえない。ひょっとして『武士の一文』もこんな感じだったのだろうか?
まぁ、色々言ったけどこれは山田作品に対する期待値が他の監督よりも高い為に辛くなるワケで決して駄作という事ではないので普通の期待には充分応えている作品だと思う。大体がこの水準の豪華オープンセットで考証もしっかり映画製作出来る監督は今や山田洋次しかいない。(山田洋次しかいない事が悲しい事だけど)
違う観方をすると吉永小百合は疲れた感じであっても"吉永小百合"としての美しさをスクリーンで魅せてくれるし、得意の泳ぎを披露するというサユリスト必見のシーンまであり、まさに吉永小百合の魅力満載な映画だ。
- by Phantom
- at 22:02
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