2010年7月28日

「マン・レイ展 知られざる創作の秘密」

マン・レイ展
  国立新美術館で始まった「マン・レイ展 知られざる創作の秘密」を観た。

  マン・レイの膨大な作品の中から400点に及ぶ作品が展示されており、まさに回顧展と呼ぶに相応しい作品数で、偉大なフォトグラファー、マン・レイというよりも偉大なアーティスト、マン・レイを感じる事ができる。中でもヨーロッパ巡回中には全部を展示するのに間に合わなかったというカラー写真のポートフォリオが今回は全て公開されているし、なによりも写真に限らず、スケッチ、デッサン、デザイン物、手紙、それにマン・レイによる短編映画も上映されており、まさにマン・レイの創作の秘密の一端を垣間見れる展示会だった。

  展示会場の出口付近には篠山紀信撮影によるマン・レイのアトリエとジュリエットの写真が展示してあり、ちょっと嬉しいおまけ付き。

キキ花束を持つジュリエット

2010年7月11日

『生誕250周年記念 -北斎とその時代- 』

北斎展
  神宮前の大田記念美術館で開催中の『生誕250周年記念 -北斎とその時代- 』を観た。
  前期・後期と展示物が多少差し替えられるので前期も観たかったのだが、行きそびれてしまっていた。どちらかというと、本当は前期の方がより観たかったのだが、仕方ない。

  北斎の傑出した構図の設計と、ヤリ過ぎではないか?とも思える程の大胆なデフォルメは北斎ならではの持ち味で、個人的には絵師の気迫、筆遣いが直に伝わりやすい肉筆画の方が好きではあるが、版画は絵師のセンスが肉筆画よりも純粋に表れるので北斎の凄さがストレートに伝わってくるし、版画は各パートの職人達との分業による作品なので、絵師を支えるそれら分業に寄る職人の確かな仕事ぶりも垣間見る事が出来て楽しい。

富嶽三十六景「駿州江尻」
富嶽三十六景「駿州江尻」
  飛び散る紙と笠で風を表現しているこの躍動感が北斎の大きな魅力。強風なのが素晴らしい。

富嶽三十六景「遠江山中」
富嶽三十六景「遠江山中」
  対角線を結ぶ様に真ん中にドーンと木材を配置し、まるで絵を二分割するかのような大胆と木材を支える柱脚の間からのぞく富士がイイ。

葛飾応為「吉原格子の図」
葛飾応為「吉原格子の図」
  実は今回、一番観たかったのは北斎の娘、応為の絵。展示されていたのはこの「吉原格子の図」ではないが、美人画を描かせたら北斎も唸ったと言われる応為は明暗を描く事に深いこだわりがあり、女性絵師ならではの鋭敏な心理描写と繊細なタッチがたまらない。


びいどろ
  W杯決勝までスペインが勝ち上がった事を祝う為、というワケでもないが、友人たちと久しぶりにスペイン坂のびいどろへ行った。
  リーガ・エスパニョーラでの熱狂に比べいつもイマイチ冷ややかな扱いの代表だけど、さすがに今回は千載一遇のチャンスだけにスペイン国内も盛り上がってるだろうな〜。今回、勝っておかなきゃウソだろ。ま、それはオランダもだけど...

2010年7月 4日

ナポリ 宮廷と美 「カポディモンテ美術館展」

カポディモンテ美術館展
  上野の国立西洋美術館で開催中の「カポディモンテ美術館展」を鑑賞。
  最近は上野は上野でももっぱら東博通いばかりで西洋美術館の方はちょっとご無沙汰になってしまった。いつ以来かもハッキリ憶えてない...たぶん「ベルギー王立美術館展」以来かも、もしそうなら早2、3年ぶりとなる。なんせここ数年は日本美術に完全に傾倒していたからね。ま、今でもそうだけど、スペイン、イタリア美術も疎かにならない様にしないとね。ボルケーゼ美術館展はスルーしちゃったし...。

ユディトとホロフェルネス
  アルテミジア・ジェンティレスキの「ユディトとホロフェルネス」 

  今回、個人的に一番観たかった作品、

  アルテミジア・ジェンティレスキ自身の暗い体験が色濃く反映しているのではないか。と、解釈されているが、まだ10代の時にジェンティレスキが被った不幸に対する復讐心がこのユディトと殺人を共謀する侍女と二人の毅然と殺害をやり遂げようとする意志と首を切り落とそうとしている二の腕に力を込めているユディトのやや冷笑的にも見える表情が、恐ろしくも凄まじい描写力で表現されていて本当に素晴らしい。

  ナポリ派にとってバロックはカラヴァッジョからスタートしている訳で、同じ主題の先例としてカラヴァッジョの「ホロフェルネスの首を斬るユディト」があるけど、カラヴァッジョよりも写実性の高く、鬼気迫るこちらの画の方が好きだし、アルテミジア・ジェンティレスキ自身が後に模写したウフィツィ美術館にある方よりも圧倒的に良い。

グイド・レーニ
  グイド・レーニ「アタランテとヒッポメネス」

  このグイド・レーニ「アタランテとヒッポメネス」は実はプラド美術館にもあり、美術家の間では、プラド美術館にある方が、このカポディモンテ美術館の画よりも先に描かれたもので、画の寸法もやや大きいらしいが、カポディモンテ版の方が個人的には素晴らしいと思うし、実際、質の高いのはカポディモンテ版の方だという。

  これまで美術というとどうしても、フィレンツェやヴェネチア、あるいはローマ方面ばかりにどうしても目が向きがちだったが、カポディモンテ美術館の渋くて優れたコレクション(特にバロック作品)が他所に負けず劣らず豊富で南イタリアのナポリがやはり芸術的にも、とても重要な土地であった事の認識を深める事が出来た。

2010年7月 3日

映画『奥様は大学生』

奥様は大学生
久しぶりに神保町シアターで1956年の作品「奥様は大学生」を観た。
内容はタイトル通りの単純明快な設定、主演の香川京子の旦那役は木村功なのだが、どーも、この二人の夫婦役は成瀬巳喜男の「杏っ子」での夫婦役とダブってしまい(良妻兼備の妻と知性的だがちょっと頼りない夫という役どころも似てる)、今作品でも木村功がそのうち本性だしてねちっこい愚痴夫になっていくのではないか?と観ていても気が気じゃなかったのだが、無事、そういう陰鬱な展開にならず慎ましいハッピーエンドで終了。
息子の結婚に反対している故郷の父親(藤原釜足)が息子達が結婚生活を始めたアパートに様子を見に上京してくるが、父親の機嫌を取る為にわざと封建的な夫婦関係を装ったりして、今日的な目線で観ると、とても古めかしくも微笑ましいけど幼い。

個人的には香川京子主演作であるという事でそれなりに楽しめたが、ライト・コメディとしては平板だし、女性の社会進出と家事の両立は可能かという素朴なテーマを追ったドラマとして見ても中途半端、コメディ・リリーフ的役割を演じた中村メイコの存在だけが救いだった。